すなめりくんの読書ブログ

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これまでの人生で読んで良かったと思う本を紹介していきたいと思います。

【おすすめ入門書】 はじめての「中東、イスラム教、イラク戦争」 入門 (対象:高校生~)

おすすめ入門書

中東から世界が見えるーイラク戦争から「アラブの春」へー 著者 酒井啓子

  本書は岩波ジュニア新書の、中高生にも理解できる表現で学術の最先端の内容を伝えるというコンセプトで作られている〈知の航海〉シリーズの1冊。

 

この本は、

中東ってどこだっけ?石油が採れるところ?

中東のイメージ=イスラム

イスラム教はなんか怖い、イスラム国(IS)のイメージ。

ニュースでシーア派スンニ派とか聞くけど何で2つの宗派で戦争が起こっているの?

イラク戦争に日本も日本も自衛隊が派遣されたって聞くけど、なんでイラク戦争が起こって、結果イラクはどんな風に今なっているの?

中東って親日(日本に好意的)って聞くけどどうして?

などなど、中東について初めて学ぶ人には、最適の1冊。

 

 

 また、長年独裁者に支配されていた北アフリカ、中東、アラブ地域で次々とデモが起こって独裁政権を倒した「アラブの春」がなぜ起こったのか、その結果どうなったのか?

 そして、この運動は20代、30代の若者が中心となって起こしたものですが、この運動がアメリカのウォールストリート街で起こったオキュパイ運動(経済格差の解消を求めて財界や大富豪への課税強化を訴えたデモ)や台湾のひまわり学生運動(国内の政治が機能していないことへの怒り)、香港の雨傘運動(中国の影響を強く受ける香港で、民主主義を求めるデモ)、そして日本の脱原発運動、安保法制に対するデモなどにも影響を与えたといわれています。

 社会運動などに興味を持たれている方にも、中東の人々が何を感じて路上に立って抗議しているのか知ることができ、お勧めできる1冊となっています。

 

 本書は、アラブ地域がなぜ争いが絶えない状況になったのか、ここ50年ほどに絞って歴史を学ぶことができます。著者の考えなどは比較的少なめなのですが、その中で印象的だったものを紹介します。

 著者は、イスラム圏には親日的な国が多いことに対して、一方で日本のイスラム圏への接し方を批判します。

アラブ人とイスラーム教徒はいつも疑問に思うのだ。なぜ日本は、自分たちの価値や伝統、遺産から力を引き出して、それを変化させ適応させることで、昔の武士を、近代的な兵士や企業のビジネスマンに変容させることができたのだろうか。そして、同じことをなぜ、我々アラブ、イスラーム世界の人々はできないのだろうか。

 ところが、その中東の人々の日本への思いは、往々にして片思いに終わっています。日本は中東を、ふたつの視点でしか見ていません。石油という資源をいかに確保するか、ということと、アメリカの中東政策にどうおつきあいするか、ということです。そこには、お互いの歴史や社会を理解して1対1で向き合う、という姿勢が欠けています。

 そして、そんな日本に「共振するこころ」が大切だと言います。

長くパレスチナ解放運動に関わってきたライラ・ハーリド氏が日本に来られたときのエピソードとして、

福島の避難民を見て口にしたのは、「心からその痛みがわかる」という言葉でした。なぜなら、原発事故で家を追われた人々も、自分たちパレスチナ人も、突然故郷を失い、生活の場を奪われたことでは同じだからだ、と彼女は言うのです。そして、仮設住宅に暮らす人々もまた、ハーリドに対して、「自分たちは家を追われてまだ1年だけれども、パレスチナ人は60年にもなるのよね」、と慰めの言葉をかけたと言います。

アメリカで9・11事件が起きたとき、それに快哉を叫んだちゅとうの人々がいたことは事実です。しかし、同時に彼らはこう言ったのです。「これでアメリカも、突然の戦争、突然のテロによって、無辜の人々、同胞の命が失われることの残酷さに気が付くに違いない。イスラエルの攻撃を日々受けているパレスチナ人の痛みを、ようやく理解するに違いない」、と。

しかしながら、その後にアメリカが選択したことは、アラブ人への共感ではありませんでした。反対に、アラブ諸国やイランや、その他イスラーム世界全体を敵視して、あたかもテロリスト予備軍のように、疑いと警戒をもって接することだったのです。

同じ痛み、同じ苦しみを持って、共振性を取り戻すこと。尊厳のある自分自身を取り戻し、相手の尊厳も認めること。それこそが、「アラブの春」後のアラブ諸国、中東の人々が試行錯誤しながら模索していることです。そして、日本に生きるわれわれもまた、その試行錯誤に共振することが多いはずです。

 

偏見をもつことなく、正しく中東を知り、そしてこれからの社会を共に生きていく力を身につけるきっかけになればと願っています。