大人と先生が大嫌いな中学生に読書感想文でオススメしたい『ぼくらの七日間戦争』
押し付け、命令ばかりする親や教師と戦うために河川敷にある工場に立てこもる中学生の話。
――そうさ。子どもはおとなのミニチュアじゃないんだ。自分たちの思いどおりになると思っていたら大まちがいだ。それを、はっきりと思い知らせてやるぜ。
明日から夏休みという暑いある日のこと。東京下町にある中学校の1年2組の男子生徒が全員、姿を消した。彼らは河川敷にある工場跡に立てこもり、そこを解放区として、対面ばかりを気にする教師や親、大人たちへの”叛乱”を起こした! 女子生徒たちとの奇想天外な大作戦に、本物の誘拐事件がからまって、大人たちは大混乱に陥るが――。何世代にもわたって読み継がれてきた、不朽のエンターテインメントシリーズ最高傑作。
みんなで立てこもる秘密基地に家から持ち寄った缶詰などの食料をみんなで食べたり、この「秘密基地」に侵入しようとする教師たちに落とし穴を仕掛けたりと、爽快で娯楽性の高い小説です。特に男子なら、誰でも1回は秘密基地的なものに憧れたときがあったのではないでしょうか?
僕は、教師が嫌いでした。えらそうに命令するからです。そして、時にその命令が理不尽だからです。上から目線で校則などを勝手に押し付けてくる教師が大嫌いでした。そのことが、僕が高校の教員になったことに大きく影響をしています。
もっとも、教員となった今では、教員の側の想いや立場もよく理解できるようになりましたが。
現在、教育界において、管理主義的な風潮が強まっていると言われています。もちろん、社会の教育現場に対する見方など、外的な変化という要因はあると思います。また、超格差社会となりつつある現在において、厳しい生徒が集まる中学や高校において、生徒を厳しく管理、コントロールしなければ学校秩序の維持ができなくなることへの恐怖は身をもって体感しています。
しかし、それだけでいいのでしょうか?
「われわれは、子どもを”いい子”にしようとしています。われわれのいう”いい子”とはなんでしょうか? それは、おとなのミニチュアですよ。つまり、おとなになったとき、社会の一員として、役に立つように仕込むのが教育なのです。(略)これは、おとな優先の発想です。身勝手とは思いませんか? われわれは、一度だって、子どもの目で世界を見たことがあるでしょうか? 子どもは、おとなの囚人ではないのです。
例えば、知らない親戚の人と会ったときに、2歳なら泣き出すこともあるでしょう。5歳くらいなら照れてお母さんの足にしがみついて隠れることもあるでしょう。中学生くらいなら、そっけない態度をとることもあるでしょう。それでいいのではないでしょうか?「ほら、挨拶をしなさい」という子どもへの投げかけは必要でしょうか?そして、それは何のために、もっと言えば誰のためにしているのか、少し立ち止まって考えてみてほしいと思います。もちろん、礼儀正しく挨拶ができることは、好ましいことだと思います。しかし、そのような大人の価値観を押し付けすぎることを僕は危惧しています。
親にとって、教師にとって子どもは操作の対象物ではないということ、尊厳ある1人の人間であるということを忘れてはならないと思います。
生まれながらの、ありのままの顔面をさらけ出す、ということを強要する化粧禁止という校則は本当に必要でしょうか?
「髪の毛を染める=不良」と捉え、生まれたままのありのままの髪の毛を強要する学校(と社会の価値観)は好ましいものでしょうか?また法的根拠はいったいどこにあるのでしょうか?
あれはだめ、これはだめという校則。ルールを守らせることが自己目的化していないか、省みる必要があると思います。
なんでも世界と比較する必要はないとは思いますが、校則に関するガラパコス化は冷静な視点で議論されるべきだと思います、学校外で。
高校教員であるわけですが、こういうアンチ教師的な本を読書感想文に書いて、それを読んだ先生の反応を見てみたいという思いがあったりします(笑)。
これを読んだ中学生、ぜひ読んで読書感想文を書いてみませんか?
追加でもうひとつ、最高に面白い小説を読書感想文にオススメします。この小説を読書感想文にオススメする教員は自分くらいかなって思えるくらいぶっ飛んだ小説です、一見。でも、素敵で面白いですよ!