キャバクラや援助交際で働く人の世界を感じる『裸足で逃げる -沖縄の夜の街の少女たち-』
沖縄の女性たちが暴力を受け、そこから逃げて、自分の居場所をつくりあげていくまでの記録
それは、「かわいそう」でも、「たくましい」でもない。この本に登場する女性たちは、それぞれの人生のなかの、わずかな、どうしようもない選択肢のなかから、必死に最善を選んでいる。それは私たち他人にとっては、不利な道を自分で選んでいるようにしか見えないかもしれない。上間陽子は診断しない。ただ話を聞く。今度は、私たちが上間陽子の話を聞く番だ。この街の、この国の夜は、こんなに暗い。岸政彦(社会学者)
(表紙帯より引用)
この本は、社会学者で、琉球大学教育学部教授の上間陽子さんが、
2012年の夏から沖縄ではじめた調査をきっかけに出会った女性たちのうち、キャバクラで勤務していた、あるいは「援助交際」をしながら生活をしていた、10代から20代の若い女性たち
に直接会って話を聞いて、彼女たちの人生を「生活史」のような形で記録した本です。
想像以上に過酷な人生を送ってきた、女性たちの記録を目にすることになります。しかし本書は、それを悲劇の物語にするのでもなく、そこから立ち直っていく過程を描いた希望の物語にするわけでもありません。
そこにあるのは現実のみで、何か脚色することは決してしていません。
ただただ苦しみ続ける女性たちと同じ目線で、まるで友達のようにして苦しみを「聞く」、そして彼女たちがいずれは、将来は、きっと幸せを自分の手で掴み取ることができると信じる。けれども、苦しくてどうしようもないときは、自分を頼ってほしい。
著者のこのようなスタンスを僕は感じました。
正直、この本を読んでも、著者が体験した衝撃の1%くらいしか伝わってない気がしてます。それは著者の文才がないからではなく、僕の共感力が乏しいからでもたぶんありません。それが限界なのかなと。
けれども、自分が全く知らない世界の日本人の生き様を1%でも感じることができるということは、奇跡のようなことだと思います。少なくともメディアが発達していない数十年前ならほとんど不可能なことだったのではないでしょうか。
著者が見聞きして受けた衝撃の一端を、感じることができて本当に良かったです。
内容からわかる通り、決して明るい本ではありません。けれども不思議なことに読後感があまり悪くなかったのです。本当に不思議なことですが。
著者の上間さんは、あとがきで、
子どもたちがゆっくりと大人になれるように、そして早く大人にならなくてはいけなかった子どもたちが、自分を慈しみ、いたわることのできるような場所をつくりだしていきたい
と書かれていました。学校・教室もそういう居場所の1つになれるようにしたいなあと思いました。
余談ですが、この本が良かったと感じた方には是非、『叫びの都市』も読んで頂きたいです。