すなめりくんの読書ブログ

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高校の教員です。読んで良かったと思う本を紹介していきたいと思います。

【猫が恋のキューピット】 『猫弁-天才百瀬とやっかいな依頼人たち-』

猫に囲まれた弁護士事務所!

猫が恋のキューピット!

心温まる1冊をよければどうぞ!

 

 

猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち (講談社文庫)

猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち (講談社文庫)

 

お見合い30連敗。冴えない容貌。でも天才。婚活中の弁護士・百瀬太郎は猫いっぱいの事務所で人と猫の幸せを考えている。そこに舞い込むさらなる難題。

 「霊柩車が盗まれたので取り戻してほしい」。笑いあり涙ありのハートフル・ミステリー、堂々誕生! 満場一致で第1位、TBS・講談社ドラマ原作大賞受賞作。

 

 

 

  東大法学部主席卒業、頭脳明晰だけど見た目は冴えない、弁護士事務所の黄色いドアを開けたら猫弁先生と猫ちゃんが迎えてくれる。猫ちゃんに囲まれて相談が できる弁護士事務所に舞い込む依頼(ペット関連が多い)をゆる~く解決しつつ、一癖も二癖もある人々と素敵な触れあいが描かれています。

 本書は6つの短編からなっています。それぞれ、特に関係なさそうな出来事が、実は伏線となって物語終盤に交差します。(こういう感じの「ほっこり」する話が僕は好きです)

 本書は、人が死なないミステリー小説です。ミステリー小説といっても、事件を解決する部分にミステリー性はあまりありません。ひょうひょうと事件を解決して いく過程で各短編で散りばめられた伏線が終盤になって素敵に、意外性をもって交差する部分がミステリーちっくという感じです。

 

 

 

ちなみに続編も出てるのでそちらもおすすめです。(僕は2作目までしか読んでないのですが、また読みたいと思います。)

 

猫弁と透明人間 (講談社文庫)

猫弁と透明人間 (講談社文庫)

 
猫弁と指輪物語 (講談社文庫)

猫弁と指輪物語 (講談社文庫)

 
猫弁と少女探偵 (講談社文庫)

猫弁と少女探偵 (講談社文庫)

 
猫弁と魔女裁判 (講談社文庫)

猫弁と魔女裁判 (講談社文庫)

 

『謎の独立国家 ソマリランド』 が面白すぎてヤバい!(笑)

  海賊国家とリアル北斗の拳国家と国境を接していながら、道端の両替所でお店の人が寝ているほど治安が良い、自称国家「ソマリランド」を知っていますか?

 ほんの20年前まで無差別爆撃や氏族間の虐殺で大量の人が殺されていた場所が、今では外務副大臣が大統領の許可なしでオーストラリアの企業と勝手に署名したということで憲法違反ではないか、と野党が追及している平和な民主主義国家に変化したことを知っていますか?

 知れば知るほど謎が深まるソマリアを味わってみてください!

 

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

 

西欧民主主義、敗れたり!!

終わりなき内戦が続き、無数の武装勢力や海賊が跋扈する「崩壊国家」ソマリアその中に、独自に武装解除し、数十年も平和に暮らしている独立国があるという。

果たしてそんな国は本当に存在しえるのか?事実を確かめるため、著者は誰も試みたことのない方法で世界一危険なエリアに飛び込んだ――。

世界をゆるがす衝撃のルポタージュ、ここに登場!

BOOK OF THE YEAR 2013 今年最高の本 第1位

(本書の帯より引用)

 

 

 みなさんはソマリアという 国にどんなイメージを持っていますか?僕は海上自衛隊が派遣される場所で、海賊が暴れているイメージがありました(笑)。

 それは完全に間違いではないですが、ソマリアは、以下の写真の通り、3つに分かれているそうです。

 

赤線より南が有力氏族、政府、反政府、イスラム過激主義などが覇権を争い日々戦闘が行われている「リアル北斗の拳」。赤線の北側が海賊国家「プントランド」。そして、緑線の左側が過去には大量の虐殺事件などが何度も起こったにも関わらず、この20年近くはかなり平和で、極めて民主主義が機能している奇跡の国「ソマリランド」。

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  ソマリランド国連未承認の「自称国家」ですが、かなり平和で、民主主義が正常に機能しているという噂を著者の高野さんは聞いたそうです。しかし、日本にはソマリランドに関する研究がほぼない状態。そこで、本当なのか、実際に行ってみたというルポです。

結果どんな感じだったのか?

 

・住民のソマリ人は傲慢で、いい加減で、約束を守らず、荒っぽい!(笑)

・夜8時過ぎでも外国人が1人で歩くことができる!(奇跡)

・街中に銃を持った民兵がほぼいない!(奇跡)

・街中の市場にある両替所(札束が大量に積み上げられている)の店員が寝転んでいる(奇跡すぎ!!。日本なんか銀行がどれだけ厳重に警備されているか考えたら、日本より遥かに治安が良いともいえる)

・カート(合法ドラッグ)をみんなやりまくる!(笑)

・日本より二院制が遥かに機能している!(奇跡すぎ)

・自称国家なのに自国の通貨がある!(奇跡すぎるらしい!)

 ・二十数年前、大量に虐殺が起こっていた時代、長老たちの話し合いで、みんなが武器を放棄して(長老たちが回収して)平和になった!(奇跡)

 

 

 日本にいる僕らからすると、この凄さがピンとこないけれど、上記したことを外国・国連の力を一切借りず(本書を読めばわかるけれど、外国が余計なことをしなかったからこそ出来た)これらを実現してしまった!!

 もう一度確認すると、氏族間で大量に殺し合いをしていた状態から、アフリカ最高レベル(というか読めばわかるけれど、日本よりずっと政治が機能している)になった!しかもすぐ近くには「リアル北斗の拳」国家が暴れているにも関わらず!!

 

 

 僕は、憲法学者の木村草太さんがすすめる人生最高の10冊でこの本が紹介されていて興味を持ちました。僕のブログでは今回はあまり触れませんが、民主主義、政治、中東の政治問題に外国がどのようにコミットするべきか、など政治を考える上でも大変興味深い本になっています!

 最後に、いかに自称国家ソマリランドの政治が成熟しているか、エピソードを1つ紹介してこの記事を終わりたいと思います。

 

 

ソマリランドの議会とグルティ(長老たち)は、パッと見は日本の衆議院参議院のような関係にある。新しい法案を作るとき、まず議会で討議して可決されるとグルティに送られる。グルティでも可決されれば法案は成立するが、グルティで否決されると議会に差し戻される。(略)

 ソマリランドではグルティの賛意を得られなければ法案は絶対に成立しない。そこで法案は議会に差し戻され、修正を加えられてから、あらためてグルティに送られる。そこで可決すれば成立し、否決すれば再度議会に戻されるか廃案となる。(略)

 議会が可決した法案をグルティが否決するというのはどういう場合なのかとアブドゥラヒ先生に訊くと、こんな例を教えてくれた。

 この年(2011年)、与党が「女性の政治進出を促すため、議席のうち30を女性に割り当てる」という法案を提出し、議会で可決されたが、グルティでは否決、結局廃案となった。

 「それは保守的すぎるんじゃないですか?」私が眉をひそめると先生は首を振った。

 「特定のグループに議席の割り当てを行ってよいとは憲法のどこにも書いていない」

 先生が言うには「われわれも女性には政治に参加してほしい。でも議席の割り当ては憲法違反だ。与党はそういったことを深く考えず、次の選挙のために人気取りをやっただけだ。もしこの法案が通れば女性の票がたくさんとれるからな。でも、もし本気で女性の議席割り当てをやりたいなら、まず憲法を変えなければいけない」

 長老たち半端なく凄いですよね!(笑) アフリカにしては民主主義が機能しすぎているってレベルじゃなくて、もはや羨ましいってレベルです…。 

  とにかく全てにおいて衝撃を受けますが、民主主義というものも僕たちは日本的(西欧的)なものが常識として認識していますが、それがひっくり返されます!

 

 

このクソ面白い本を是非1人でも多くの方に読んでもらえればと思います。

 読むと、未開の地を旅したような気分になれます!

 

気持ちを伝える能力が奪われた日常を考える『自閉症の僕が飛びはねる理由』

友達と話せない、お腹がすいた、痛い、助けて、などと相手に感情を伝える能力が奪われた日常をあなたは想像できますか?

まさにそのような状況で生きている東田直樹さんの思いが書かれた1冊です。

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

 

 

僕が跳びはねている時、気持ちは空に向かっています。空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのですーー。人との会話が困難で、気持ちを伝えることができない自閉症者の心の声を、著者が13歳の時に記した本書。障害を個性に変えて生きる純粋でひたむきな言葉は、当事者や家族だけでなく、海をも越えて人々に希望と感動をもたらした。世界的ベストセラーとなった話題作、待望の文庫化!

(裏表紙より引用)

 

 僕はこの本を読むまで恥ずかしながら自閉症についてほとんど知りませんでした。この本を読んで自閉症とは(症状の程度はあるけれど)

・自分の感情をうまく表現できない

・自分の身体を思い通りに制御することが難しい

この2点を感じました。

 1点目は、例えば「はい」と言いたくても「いいえ」と言ってしまうなど、思いを表現することの難しさを東田さんに教えてもらえました。大切なことは、自閉症の人々は、言語表現が苦手ではあるけれど、僕たちと同じように、うれしい、悲しい、辛いといった感情を持っているということです。しかし、それを表現することが難しい。

  2点目は、僕たちは普通に右手でペンを取りたいとき、思い通りに動かせます。しかし、東田さんはそうではないそうです。身体は自分のものではない別物のようなもので、思い通りに動かすことが大変難しいそうです。

 

 自閉症を漢字そのままで理解すると、自ら閉じこもっている人、という意味になります。人との付き合いが嫌いで、人との関りを拒否している、そういう印象を与えますよね…。

 しかし、東田さんの本を読めばそうではないことが、すごくわかりました。想いは沢山ある、しかしそれを言葉にして伝えることが困難なだけだと。だからこそ、自閉症の人と共に過ごす際に、どれだけ周囲が理解しているか、がすごく大切だとわかりました。すべての人が生きやすい社会を、自分らしく認められる社会を、そんな社会の実現に微力ながら貢献したいと思い、ブログで本書を紹介させて頂きました。

 

 

 最後に、作家で、また自閉症の息子を持つ親でもあるデイヴィッド・ミッチェルさんの言葉を紹介して終わりたいと思います。

 

デイヴィッド・ミッチェルさんは、自分の息子が、

なぜうちの3歳児は床に頭をがんがん打ちつけるのだろう?自分の目の前ではげしく指を振るのか?皮膚が敏感すぎて、すわることも横になることもできないのはなぜか?『ピングー』のDVDが傷だらけになって再生できなくなったとき45分間も悲嘆の吠え声をあげつづけるのはどうしてか?

 このような行動をとることについて、これまで読んだ自閉症に関する育児書、専門書などを読んでも、 息子を理解できなかったそうです。しかし、本書を読んで、

この本を読んだとき、直樹の言葉をつうじて、まるでうちの息子が自分の頭の中で起きていることについて、初めて私たちに語ってくれたかのように感じられた

 と。そして何よりの希望は、

この本は、ただ情報を提供するよりも、はるかに遠くまで届く。見たところどうにも寄る辺ない自閉症児の体の中に、あなたの、私の、みんなの体とおなじ、好奇心にみちた繊細で複雑な心が閉じこめられている

 ことを教えてくれたと言っています。

 30ヵ国語以上の言語で翻訳され、自閉症の人と関わる世界中の人の希望になったこの素晴らしい本を1人でも多くの人に手に取って頂けたら幸いです。