すなめりくんの読書ブログ

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高校の教員です。読んで良かったと思う本を紹介していきたいと思います。

部落差別で苦しんでいる人々の希望となる1冊「結婚差別の社会学」 著:齋藤直子

被差別部落出身者との恋愛や結婚を、出自を理由に反対する「結婚差別」。部落出身者との結婚をめぐる家族間の対立、交渉、破局、和解などのプロセスと差別の実態を、膨大な聞き取りデータの分析から明らかにする。同時に、結婚差別の相談・支援活動の事例から「乗り越え方」のヒントを探る。 (本書の帯より引用)

 

結婚差別の社会学

結婚差別の社会学

 

 

著者の齋藤直子さんは、社会学者の岸政彦さんの「連れ合い」ということのようです。

岸さんの本が素敵なように、齋藤さんの本書もとても素敵な本でした。ぜひ、1人でも多くの方に、この本の素敵さを感じてもらえればと思い、1年ぶりくらいにブログを書くことにしました。

 

 

おすすめの対象としては、

・学校での部落差別の学習が、部落の歴史などばかりで、「いま」どうなっているのか知りたい人。

・人権HRでの部落学習に困っている教員

・結婚というものに人生で関わる可能性のあるすべての人

 

 

 

 

 

正直、部落差別を学ぶことは大切だと一方ではわかりつつ、あまり積極的になれない自分がいます。それは、自分の中にある差別意識なのかもしれません。差別はどれだけ苛烈で、大変だったか、それが今もこんなに激しく差別されてる実態があって、だから、差別を学び、みんなで乗り越えましょう!! 的な感じが少ししんどいんです。今でもその感覚あります。

そんなにも今なお差別は残っている的な部分を強調したら、余計に部落に関わりたくないという感じを社会に与えないのかなあと思ったり。

 

 

そんな僕が、この本を進めたいのは、これまでの僕が知ってる部落に関する本とは決定的に違うところがあるからです。

それは、これまでの部落の本が、いかに差別の実態が厳しいか、当事者が辛い思いをしていたか、にフォーカスが当たっていた(と少なくとも僕は思ってます)のに対して、この本は、こんな結婚差別に出会い、それをこのようにして乗り越えました。という具体的な差別と向き合った当事者の「プロセス」が描かれているのです!

 

荻上チキさんのコメントがそれを象徴しています。

僕も、結婚差別の相談をされたことがある。当時この本が出ていたなら、間違いなくこう言っただろう。「この本を読むといいよ。君の力になってくれるから」(本書の帯より引用)

 

 

 

悲しく、辛く、厳しい差別の当事者のお話ではなく、その差別をどのように当事者が向き合って、乗り越えたか(乗り越えようとしたか)を描いており、そして結婚差別の問題を類型化、分類したうえでの齋藤さんの考察を読むことが本当に勉強になりました。

話の中には、結婚が破談になったケースも含まれています。親と縁を切って20年後に親と和解したケースなど本当に多様な事例が紹介されています。本を読めばわかりますが、10組のカップルがいれば、10通りの状況があり、こうすれば良いという答えを明示してくれる本ではありません。けれども、この本が、現在進行形で結婚差別の問題に苦しんでいる人や、将来その問題に直面するのではないかと危惧している人への希望になるのではないかと思ってます。ぜひ、手にとって頂ければと思います。

 

僕としては、将来自分や自分の大切な人が部落差別に関する結婚差別に直面した時に、この本を読んだ経験は間違いなくプラスになるのではないかと感じています。