空が青いから白をえらんだのです -奈良少年刑務所詩集ー
空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)
- 作者: 寮美千子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/05/28
- メディア: 文庫
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この本は、奈良県に住む著者が、奈良県の少年刑務所で受刑者の少年たちに詩をかくという授業を行い、その受講者たちがかいた詩が載っている。子育てに苦しんでいる方、教育関係者などに特にお勧めです!
この取り組みの目的を端的に説明している箇所を紹介したい。
(作者)刑務所のなかでも、みんなと歩調を合わせるのがむずかしく、ともすればいじめの対象にもなりかねない人々。極端に内気で自己表現が苦手だったり、動作がゆっくりだったり、虐待された記憶があって、心を閉ざしがちな人々だ。
(教育官)「家庭では育児放棄され、まわりにお手本になる大人もなく、学校では落ちこぼれの問題児で先生からもまともに相手にしてもらえず、かといって福祉の網の目にはかからなかった。そんな、いちばん光の当たりにくいところにいた子が多いんです。(省略)童話や詩を通じて、あの子たちの情緒を耕していただきたい。」
特に印象に残ったエピソードを1つ紹介。
すきな色
ぼくのすきな色は
青色です
つぎにすきな色は
赤色です
そして、この詩に対する著者及び、他の受講者の反応として、
何も書くことがなかったら、好きな色について書いてください。そう課題をだして、Bくんが提出した作品がこれでした。あまりにも直球。いったい、どんな言葉をかけたらいいのか、ととまどっていると、受講生が二人、ハイッと手を挙げました。
「ぼくは、Bくんの好きな色を、一つだけじゃなくて二つ聞けてよかったです」
「ぼくも同じです。Bくんの好きな色を、二つも教えてもらってうれしかったです」
それを聞いて、思わず熱いものがこみあげてきました。世間のどんな大人が、どんな先生が、こんなやさしい言葉を、Bくんにかけてあげることができるでしょうか。
「Bくんは、ほんま赤と青が好きなんやなあって、よく伝わってきました」
仲間の言葉のすべてが、Bくんへの大きな励ましです。普段、あまり表情のないBくんの顔がふわっとほころび、笑顔が咲きました。
本書読んで、荒れた中学校で長年問題を抱えた生徒と向き合ってきた方の言葉を思い出した。「荒れた中学校などでは、教員が生徒に身体的・精神的に傷つけられることも多い。そのときに、あの地域は、あいつは、あの親は、『どうしようもない』と自分を守るための壁を作ってしまう教員が多い。しかし、他者を傷つけてしまう生徒は、それだけ自分自身がこれまでの人生で傷つけられきたんだ。だから、そういった生徒に傷つけられたときに、拒絶ではなく、生徒の心の痛みを優しく受け止め寄り添うことができる教員になってほしい」
本書の存在を1人でも多くの方に知っていただき、罪を償って出所する人を温かく受け容れてくれる社会の実現に微力ながら貢献できればと願っています。