すなめりくんの読書ブログ

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これまでの人生で読んで良かったと思う本を紹介していきたいと思います。

本屋さんに行きたくなる1冊 【読書の意義を問い直す】

書店と民主主義 -言論のアリーナのために-

著者:福嶋聡ジュンク堂難波店 店長)

書店と民主主義: 言論のアリーナのために

書店と民主主義: 言論のアリーナのために

 

 

縮小する市場とともに低下し続ける数値を元に、それに合わせた仕事をしている限り、出版業界のシュリンク傾向に歯止めをかけることは出来ないだろう。必要なのは信念であり、矜持であり、そして勇気なのである。(本書より引用)

 

 この本を書いた福嶋さんは、僕もときどきお世話になるジュンク堂難波店で店長をされている方です。amazonや、ネット販売などの影響を受け、市場はどんどん小さくなり、本業界は危機に直面しているそうです。

 時代の変化に伴い、販売データによる「マーケティング」やビッグデータ活用が盛んに行われるようになった。それによって、出版業界の効率性を高めた一方、

出版という生業が有する大切なものが置き去りにされたのではないか? それは出版と言う営為の役割、すなわち、人を更えること、社会を更えることである。

と、業界に対して警鐘を鳴らしています。

「売れる本を売る」のではなく「作るべき本を売る」のだと。

 売れるからという理由だけで業界に携わっている多くの人が本心では売りたくないと思っている朝鮮民族を馬鹿にした本を売っている現状を嘆きます。書店は、売った本が社会に与える影響に対して責任を負うという覚悟が必要であると、福嶋さんは考えています。

 そういった考えに基づき、「NOヘイト」というフェアを実施しているそうです。多くの書店は「偏る、主張する」ことを嫌ってただ、本を並べるだけという「中立の欺瞞」を批判します。

 

 

 しかし、面白いのは、福嶋さんは差別的本を書店から排除することには否定的です。

例えば、福嶋さんは、地下鉄サリン事件が起こった後に、全国の書店からオウム真理教に関する書籍を排除した際にも福嶋さんの書店は、変わらず店頭に置き続けたそうです。

他にも、酒鬼薔薇事件で起こした青年が書いた『絶歌』という書籍は発売と同時に批判の集中砲火を浴び、販売を自粛した店舗もあったなか、店頭に置き続けたそうです。

 

そういった差別本などを置くべきじゃないという考えの人が集まった会場で意見を求められた際に、福嶋さんは

 書店の人間として、「ヘイト本」を書棚から外すと言う選択はしません。現にそこにある事実を覆い隠しても、それがなくなるわけでもなく、見えなくするのは結局良い結果を生まないと思うのです。むしろ、そうした批判すべき本を、実際に読んでみる必要があると思います。一水会鈴木邦男さんが、トークイベントで言われていました。「自分の考えを強めるためにする読書は、実はあまり重要ではない。むしろ、なぜこいつはこんな考え方をするのか信じられない人の書いた本を読むことが、勉強になった」と。だから、ぼくが今この瞬間にもっとも読みたい本は『大嫌韓時代』(桜井誠著、青林堂)かもしれません。もちろん、そうした本に感化されない自信があって言うのですが、実際に『大嫌韓時代』を読んでみたいと思います。

とありました。

 

この、読書に対する姿勢は、本書の題の一部である民主主義―たくさんの、異なった意見や感覚や習慣を持った人たちが、一つの場所で一緒になっていくためのシステム(高橋源一郎『ぼくらの民主主義なんだぜ』)―をいかに機能させるかということ。

そしてそのために、書店はどうあるべきなのか、ということを考えさせられました。

 

 

 

販売している人の想いが込められた書店という空間に足を運びたくなりました。ということで明日はジュンク堂難波店に行こうと思います(笑)。

 

本書は、福嶋さんが過去に書いたコラムをまとめて本にしているため、話の1つ1つが短く、とても読みやすかったです。また本書では、いくつもの個性的で魅力的な書店が登場します。そこにも是非行ってみたいと思いました。