年収80万で生活する研究者『はたらかないで、たらふく食べたい』
この本を読んだところで、きっとなんの役にも立たないと思います(笑)。
けれども、読んで後悔しない不思議な本でした。
はたらかないで、たらふく食べたい 「生の負債」からの解放宣言
- 作者: 栗原康
- 出版社/メーカー: タバブックス
- 発売日: 2015/04/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「生の負債」というサブタイトルにつながるんですが、これは、人が生きていく上で、背負わされているものがある、ということです。今の経済とか社会の仕組みだと、お金をかせげるかというのが物差し。かせげるのがいいことでありえらい人だし、かせげなかったら落伍者。そういう尺度ができていて、それが優劣の基準にもなっています。その尺度から出てしまう人たちは反道徳というか、人じゃないという見られ方をしてしまう。人が好きなことをやっていきたいというのと、お金をかせぐことが一致する、そういう幸せなときもあるけど、大抵は一致しないと思うんです。僕だったら文章を書くとか、本を読むとかという好きなことをやって食べていきたい。
『はたらかないで、たらふく食べたい』創刊記念・栗原康インタビューより引用
この本の目次を紹介します。
キリギリスとアリ ― はたらくこと馬車馬のごとく、あそぶこと山猿のごとし
切りとれ、この祈る耳を ― 耳切り一団
3・11になにをしていたか? ― とうとう江戸の歴史が終わった
甘藷の論理 ― うまい、うますぎる!
地獄へ堕ちろ ― ヘイトスピーチか、それともスラムの念仏か
他人の迷惑かえりみず ― 心得としての高野長英
お寺の縁側でタバコをふかす ― 大逆事件を旅してみれば
豚の足でもなめやがれ ― もののあはれとはなにか
大杉栄との出会い ― 赤ん坊はけっして泣きやまない
ヘソのない人間たち ― 夢をみながら現実をある
反人間的考察 ― 歴史教科書としての『イングロリアス・バスターズ』
豚の女はピイピイとわめく ― 老荘思想の女性観
だまってトイレをつまらせろ ― 船本洲治のサボタージュ論
目次を見るだけでワクワクしませんか?(笑)
僕が一番面白かったのは、栗原さんの失恋話です。人の失恋を面白いと言うのは不謹慎かもしれませんが。
話の内容、そして文体から栗原さんの人柄がにじみ出ていて、それが一番の魅力でした。読んでも全く役に立たないけど人に勧めたくなる本でした。
余談ですが、この本を読んでホセ・ムヒカ大統領を思いだしました。ムヒカ大統領は日本人の勤勉さを称賛する一方で現代の日本人が幸せには見えないことを嘆いていました。栗原さんとムヒカ大統領、対極的に見えるかもしれませんが、根柢にある部分で共鳴するものを僕は感じました。