僕が2017年1月に読んだ本 11冊 の紹介
僕は毎月最低10冊の読書を自分に課しています。これは、尊敬する教員(元校長)のマネです。
その教員は、読書とは未知なる価値観に出会うことこそ価値がある。だから、自分がこれまで全く興味のなかった分野の本こそ読んで欲しい。それが読書の素晴らしさだと仰っていました。
このブログを始めて数ヶ月経ちましたが、ブログが少なからず読書意欲の喚起に役立っていると感じています。
読書が好きな人は、是非ブログをして欲しいと思います。読む(インプット)という作業だけではなく、ブログを書く(アウトプット)という作業をすることで、内容が整理され、よりよい読書体験が出来ていると僕自身感じているからです。
また、他の読書ブログの方の紹介している本を読んで、関心の幅が更に広がっていることを感じています。
是非やってみてください!お勧めです!
さて、毎月10冊の読書を自分に課しています。そこで、
・その課題がクリアできているかどうか。
・読んだけれど、ブログで紹介していない本も含めて簡単に紹介したい。
上記の目的でこれから毎月読んだ本を紹介していきたいと思います。
1.生物と無生物のあいだ(著:福岡伸一)
2.ヘイトデモをとめた街-川崎・桜本の人々-(著:神奈川新聞)
3.アドラー心理学で子どものやる気を引き出す本(著:星一郎)
4.世界はもっと美しくなる-奈良県少年刑務所詩集-(編:寮美千子)
5.社会学講義
6.書店と民主主義(著:福嶋聡)
7.「つながり格差」が学力格差を生む(著:志水宏吉)
8.世界で一番貧しいと呼ばれた ホセ・ムヒカ -心を揺さぶるスピーチ-(編:国際情勢研究会)
9.嫌われる勇気(著:岸見一郎)
11.読んじゃいなよ(著:高橋源一郎と高橋ゼミの学生たち)
福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』は普通に面白かったです。ただ、少し忙しいときだったため紹介を見送りました。学術的には福岡さんの考えに批判もあるようですが、僕は生命に対する福岡さんの捉え方が非常に魅力的に感じました。
蜜蜂と遠雷は絶賛している人がすごく多いみたいで、僕も読んでみました。良かったのは良かったですが、
・すごく長くて少し疲れてしまった。
・ピアノを弾く描写があまり理解できなった(理解ではなく感覚的に感じるべきなんでしょうけれど)
などの理由から、すごく良かったと思えず、紹介を見送りました。ただ、最近はそこそこ満足した本でも紹介することもあるので自分のなかでブログで紹介する基準が凄くブレているんで、たぶん今なら紹介していると思います(笑)。
これを読んだ方はいかがでしたか?
【癒されたいときにおすすめの1冊】『思い出のとき修理します』
仕事や育児などに疲れたとき、ゆったりとした時が流れる商店街や神社を舞台にした、温かな気持ちになれる本書はいかがですか?
仕事にも恋にも疲れ、都会を離れた美容師の明里。引っ越し先の、子供の頃に少しだけ過ごした思い出の商店街で奇妙なプレートを飾った店を見つける。実は時計店だったそこを営む青年と知り合い、商店街で起こるちょっぴり不思議な事件に巻き込まれるうち、彼に惹かれてゆくが、明里は、ある秘密を抱えていて……。
どこか懐かしい商店街が舞台の、心を癒やす連作短編集。
(裏表紙より引用)
主人公の明里も、寂れた商店街で時計修理屋をしている時計屋さん(イケメン笑)も過去を引きずって今を生きています。
そんな登場人物が、思い出を修復する物語です。
もちろん、僕たちは過去の出来事を変えることはできないですよね。僕も変えたいことはいっぱいあります(笑)。
過去がどんなだったか、という評価は、現在によって決まる。
どんなにつらい過去や傷があったとしても、今が幸せで、優しさに包まれていたなら、あの過去があった”おかげ”と思えるだろう。今が不幸な心待ちなら、あの過去の”せい”になるだろう。
自分や過去を修復しながら近付いていった2人だが、逆説的に言うと、現在の距離を縮めることで、結果として過去を修復していったのだろう。
(中村航さんの解説より引用)
ちょっとアドラーっぽいですよね。わかる人がいたら嬉しいです。
過去と向き合うことは難しいことです。時間もかかります。見守り、支えてくれる人がいてこそかもしれません。
主人公の明里が、時計屋さんが、地元の人などとの温かな交流を通して、たくさんの優しさに触れ、過去の出来事を修復する素敵なお話です。
余談ですが猫も登場します!!
本書が好きな方は以下の本もオススメします!
人は自然とどのような関係を築くべきか?『人びとの自然再生』
破壊ではなく、再生へ。
地域、人と人との関係、そして社会の再生にもつながる希望の書。
自然と社会の未来の形は、どういうものが望ましいのだろうか。自然をめぐる各地のさまざまな〈いとなみ〉を、歩き、見て、聞いて、考えた。人と自然の相互関係とはどういうものか。自然をめぐる合意形成とは? 災害時や都市部での実践も含めながら、自然とコミュニティのこれからを活きいきと描き出す。
(本書カバーより引用)
本書は、人々と自然の関係のあり方を考えます。そして、それを通して、私たち人間の未来を考える1冊です。
この本を僕が読んで、オススメしたいなと思った対象は、
・地域の自然(動物)保護運動などに関心のある人。
・地域の生活や伝統文化などを継承していく教育活動に関心のある教員。
です。後者のほうは疑問に思われるかもしれませんが、本書で紹介される「聞き書き」という取り組みは、小学校から高校までどの校種でも行える非常に実践的な取り組み(実際に学校現場でいくつも実践されているよう)なので、読む価値があると思います。
本書は、専門用語などもほとんど使わず、豊かな人と自然の関りをどのように保全し、次世代に継承することができるか、という問題について、具体的な地域での取り組みにおける当事者の発言などをたくさん紹介しています。そして合意形成までの道のりについて実践的に書いている点に特徴があります。
以下、本書の議論の一端をご紹介します。
①自然(を守る)とは?
「自然保護」という言葉からイメージされる自然はどんな感じですか?
きっと多くの方は人間が介入せずに存在している森、小川などを連想されるのではないでしょうか? もちろん、そのような「原生自然」もあるかもしれないけれど、ほとんど全ての自然は人間の「いとなみ」と深く関係のあると筆者は言う。
その一例として、日本列島の自然の歴史に注目をする。僕たちは自然保護というと、森が減ってきて、木を植えなければって考えがちだけど、それは不正確で、現代は歴史期にみても森がめちゃくちゃ多い時期だそう。つまり、森が増えていると。
じゃあ森が増えたかわりに減ったものは何か?
それが「草地」。江戸時代は日本列島の約10%強が草地だったが、今ではなんと1%に満たないと…。
なんで、森が増えて草地が減ったのか?
高温多湿を特徴とする日本列島の自然において、草原は放っておくと森になる可能性が高い。にもかかわらずかつて1割程度の草原があったということは(略)人間の活動が大きかった。人間が刈り取ったり、焼いたり、あるいは、家畜を放牧することで草原は維持されてきた。(p21)
つまり、生態系の多様性において、重要な役割を果たしている「草地」の維持のために、人間の活動は多大な貢献をしていたということ。
自然とは、人間の手つかずの原生自然ではなく、人と自然の相互関係の上に成り立っているもの。僕たち人間と自然を分けて考えるべきではない。自然と人間を切り離して、自然を保護するのではなく、人間を含めた生物のいとなみとの相互関係の中に存在する自然を保護する。
このように筆者は自然を捉えています。
②コモンズと合意形成
筆者はコモンズの定義を以下のように説明している。
コモンズとは、地域社会が一定のルールのもと、共同で持続的に管理している自然環境である。また、その共同管理のしくみそのものを「コモンズ」と言ってもよいかもしれない。
つまり、地域内の問題は、地域の事情に一番詳しい地域住民が中心となって資源管理をすることが大切であると言ってます。そしてコモンズにおいて最も大切なのは、「納得」を積み重ねることだと筆者はいいます。
この合意を形成するための手法として、順応的管理、ワークショップなどを用いた豊富な実践例が紹介されています。
③人と自然の未来へ
大きな物語ではなく、小さな物語に注目することが大切だと言います。僕たちが環境問題を語るときはどうしても、地球温暖化、森林破壊、景観保全などの大きい問題を語りがちになってしまいます。もちろんそういう問題は、重要ではあるけれど、ときに小さな物語を抑圧することがあると筆者は言います。
その例として、
生物多様性の保全を目的に設置された自然保護区が、これまでその地区を利用していた住民を追い出してしまう。住民の生活に制限がかかり、貧困化していく。さまざまな思いで森づくりに集まってきた人が「生物多様性の保全」につきあわされ、やがてその活動からも遠ざかってしまう。
そうならないために、
人びとが語る自然、人びとが話す生活、そうしたものの中に自然再生の形がある。この本は、そうした小さな物語を支援し、そこから地域の自然を再生されることを後押ししたくて書かれた。
本書を読んで良かったと僕が思ったのは、1つは自然とは何かということに関して、良い意味で僕の常識を壊してくれたこと。自然保護は自然だけではなく、人の生活を含めて考えることが大切という考えはとても面白かったです。
また、保護活動に関して、学術的な理論ではなく、実際の問題に関する取り組みを実践的に紹介されていた点はとても良かったです。例えば僕が関心のある地域猫活動に将来関わるときに、この本で学んだ合意形成に関する視座は大きく活きると感じました。